認知症との日々

認知症はかなり進んでしまった。しばらくかけてなかったけど。

これを書いてるのが2022年4月。

前回書いたのが2020年11月だから1年半経ってしまった。

この間にもどんどん進んでいった。

 

最近のことを思い出しながら書いてみる。

 

2021年末ごろ。

「クーラーの掃除に業者を呼んだ」

と電話が。

でも、どうやって決めたのかわからないし、メモに66000円と書いてるらしい。
怖くなって電話してきた。

クーラークリーニングに66000円はさすがにおかしい。

そう感じて

「そのメモしてある日に、いつも通ってるデイサービスのひとに一緒にいてもらって、話を聞いてもらったらいいよ」

そうする。といって当日。

 

「クーラーの人が来るって」

「デイサービスのひとは一緒?」

「え?クーラーの人よ」

 

なるほど。もう忘れてる。

ちょうどその時、業者から電話があったので、こちらの携帯にかけ直してもらった。

内容は「クーラーの室内機と室外機の清掃、ホースの交換で20000円」とのこと。

まあ、それならいいか。なぜ66000円?とおもい業者に聞いてみた。

 

「コールセンターの人がどういう対応をしたかがわからないけど、その値段だったら風呂場やキッチンなどのまるごと掃除プランくらいですね」

 

なるほど。

話の成り行きでオーケーしてしまったんだろう。

親にはクレジットカード持たせてないから大事にはならんとは思うけど。

 

掃除が済んで、現金払いして、領収書きってもらうまでを業者に電話で確認。
とりあえず詐欺ではなかった。

 

ここんとこ、お金や薬がわからないのは当たり前で。
なので全ての支払いを「銀行引き落とし」に変更した。
老人には現金はきびしくなるかもしれないので、できるだけ銀行引き落としにするべきだ。

 

夕方電話があった(このころから日に数回はかかってきて同じ話をしてる)

「あんた、いつ帰った?」

「今日は行ってないよ」

「え?クーラーの掃除してくれたやん」

「それは業者の人よ」

そんな感じ。

まあ、行ってないけど行ってることになってるならまあ、いいか。

腰の骨を折って入院【コロナで面会できず】

母親から電話で
「腰を骨折して入院」だと知らされる。

薬カレンダーがまたわからなくなって、何を飲んだか、いつ飲んだかがわからなくなって。親父ともめたらしい。
そのはずみでこけて。

救急車で近くの病院へ運ばれた。
レントゲンではわからずMRで精密検査。折れていた。

 

骨折はまあ、ギプスやコルセットで固めて安静にしておけばなんとかなるかもしれないけれど。

入院は全ての機能が衰えるし、刺激が少なくなるので認知症には最悪。
しかも「不安」でいっぱいになるので一番悪い。

 

一人部屋に入院してるのだけど、今年はとても暖かく、部屋が暑いらしい。
暑い暑いと、電話かけてくる。
見晴らしのいい部屋なんだろう。一日中日差しが入って暑くて苦しいらしい。

老人は「暑さ、寒さ」がわかりずらいというけど、これは感覚的なことが衰えてくるからかもしれないなぁ。

 

腰は痛いし、暑いしで、とにかくイライラして不機嫌で。

「なんで私ばっかりこんな目に」

すごくよくわかる。

 

 

認知症は不安になる。
記憶がわからなくなることを認識してるから。

こんなときに周りの人ができるのは

  • 痛みや不安への共感
  • でも大丈夫だよという明るい未来への想像

この二つだ。

 

「そんなこと言っても病気だからしかたないだろ!」
「不注意だから怪我するんよ!」

 

こういうのが一番いけない。

 

認知症は「全部がわからない」わけじゃない。
人間としての尊厳もあれば、それを失う恐ろしさもわかってる。
だから、ひたすら穏やかに対応することが大切で。
僕はとてもそれが苦手だった。

今回の母親の認知症で、僕自身も少し鍛えられてるかもしれない(笑)

 

ただ、親父のショッックはなかなかだ。
わざとじゃないとはいえ自分が原因でもあるわけだし、
何しろ「日常生活」が送れるほど体力に自信もないようだ。
彼にとっての生きがい「地域のバレーボールの応援」にも杖をついてヘロヘロして行ってる。

親父も今回のことではけっこうグチの電話をかけてくる。
僕はそれを聞き、やはり「共感」と「明るさ」で対応しようとしてる。
僕自身にもストレスはたまるんだけどね。

 

今日から10日、救急病院での入院生活だ。
認知が進まないことを願う。

薬の飲み方がわからなくなった

病院からもらった薬がわからなくなってる。

親父が「お薬カレンダー」を買ってきて、壁に貼ってる。
その一つ一つのポケットに「一日分」の錠剤がはいってる。
でもそれを飲み忘れる。
忘れたなら忘れたで、次の日に飲めばいい気がするけど、(今飲んでいない)一番新しいやつを飲む。
血圧を下げる薬なんかもあるから、適量じゃないと大変なんだけど。
飲み忘れはしかたがないけど、飲み過ぎに注意しなくちゃいけないのに。

どの日を飲んで、どの日を飲んでないかがわからない。



僕も実家に帰り、病院からの薬をわけて、ポケットに入れる作業をした。
親父もやってる。
それを飲まないからイライラするし、飲め!と言われて母親もイライラする。


結局僕らではどうしようもなく、行きつけの病院の薬剤師さんに頼むことにした。
最近は「かかりつけ薬剤師」という精度があるらしく、(他の病院でもらってるものも含めて)薬の管理をしてくれるらしい。



「すごく使いやすくなった」



そう喜んで電話してきた。
まあ、それもすぐ忘れてぐちゃぐちゃになるんだけど。


「認知症になってきてる人に、期待したり、任せたりしてはいけない」
ほんとうに身に染みた。

認知症が進み始めたのはコロナでの「外出自粛」と「足の骨折」

すこしづづ、直前記憶がわからなくなってきたのは、まあ「老いによる衰え」の範囲だったかも。

それが急に進み始めたのは

  • 足の骨折
  • コロナウイルスによる自粛

が大きかった。

 

足の骨折は
横断歩道を渡ってる時に、信号が点滅し始めた。
老人なんだからできる範囲で動けばいいのに

「はやくわたらなきゃ!」

と小走りになり、自分が引いていた買い物カゴに足をひっかけて転んだ。
すごく腫れて痛かったのに、すぐに病院には行かず(老人ってほんと、こんなところがあるよね)後日あまりに痛くてレントゲン撮ったら

少し骨にヒビが入っていた。

 

まあそこまで大袈裟なことはなかったけど、母は散歩にでかけ、川沿いの風景を見て物思いにふけったり、スーパーで買い物をするのが日課だった。

たったそれだけの「刺激」がなくなったことで、急に物忘れがひどくなった。
家の中だけの生活だったからだろう。

テレビや本ではダメなんだなぁ。

 

歩けない時期はそこまで長期ではなかったんだけど。
出歩けないって怖い。

 

 

もう一つは「コロナ自粛」だ。
母は神経質な方ではなく、マスクを時々忘れてしまうくらいなので、「ストレスも溜まりにくいかな」と思っていた。

週に二回、バスに乗って街中へ行って「絵画教室」をやっていた。
(母はわりと有名な(?)水彩画家なんだ)

それにいけなくなった。
人との交流がなくなったことで、みるからに老けた。

そんなにしょっちゅう実家に帰るわけではないんだけど、この時期「いきなりおばあさん」になっていて、少なからずショックだった。

 

忙しくすることが、認知症の進行を遅らせる

 

先生がそう言っていたのを思い出す。

できるだけ考え、できるだけ人と交わり、できるだけ動く。
これってとても大事なことだけど
なかなか「用事がない」とできないよね。

 

骨折や出歩かなくなることで、自体はどんどん悪くなるから、
皆さんのお父さんお母さんにも

「くれぐれも骨折だけは気をつけて」

と何度も言うことが重要だと思う。

公共料金の支払い、お金の計算ができなくなったので僕が管理することに

実家はメインの銀行が二つ

年金が振り込まれる銀行口座と、毎月一定額を下ろして「公共料金」「携帯電話など」の引き落としのために入金する銀行口座

 

その差額を(ほんの少しだけど)貯金してるような感じ。
ところがこのごろ

「引き落とし用の通帳にお金を入金する」ことを忘れるようになって、請求書が送られてくるようになった。

それを「これ、はらったやろうか?」と不安になり、電話をかけてくるように。

まあ原因は「マスク送りつけ詐欺」事件からだ。(このことはまた後日)

 

なので公共料金引き落としを「年金入金口座」にまとめることで、請求書に不安になることもなくなるだろうと思った。

 

各会社に「振替口座変更したいのですが」と電話をかけたり窓口に行ったり。ようやく書類が揃ったところで問題になるのが

「銀行印がわからない」

というもの。

 

よくよく調べてみると、銀行口座が5つもあった。
そして印鑑もそれ以上ある。

 

 

実家の周りにはいくつか銀行があり、その昔仕事に行っていた仕事先にもあった。
利便性を考えて「いつもおろす銀行」は家の近所の銀行にしていたのだけど。

度重なる地方銀行の統合とやらで、どんどん窓口がなくなっていった。
仕事にも出なくなったので、仕事場近くの窓口にも行かなくなった。

 

セブンイレブンもない。
通帳の記帳ができないので、現金がいくらはいってるか?いくら引き落とされてるんか?把握できない。

親を車に乗せて、銀行巡り。
印鑑を確認して、定期預金を普通預金にかえて、口座数を減らしたり。
僕がスマホで管理できるところはするようにしたり。

1日がかりで記帳して、全体像が把握できた。

生命保険の引き落とし、葬儀互助会の引き落とし、携帯料金、電話料金。
バラバラになっていた口座をまとめた。

 

引き落とし口座の変更は「口座主の名前」と「契約者の名前」が違っていたりで、めんどくさいこともあったけど、なんとか一つにまとまった。

 

通帳をまとめて僕が持って帰り、キャッシュカードだけをわたして、記帳や確認は僕の仕事になった。

 

本人たちもほっとしてる。

 

世の中が高齢化し、事務手続きは機械化され、難しくなっていくと、いろんな人たちが置いてきぼりになるんだな。

「マスク送りつけ詐欺」未遂。郵便局で受取拒否。

2020年はコロナウイルスの一年だった。

マスクは品切れになり、アベノマスクが話題になる。
このごろになるともう、マスクは割と購入できるようになってきてる。

 

あるとき
「マスクが送られてきたんだけど」
と電話が。

母はネットで買い物をしない。
クレジットカードももっていない。大きな買い物がある時は僕がネットで買って配達してもらい、あとでお金をもらうようにしてる。

でも、マスク危機の時に、いろんなネットでマスクを買おうと努力した。
その時に「実家にも買ってあげないと」と思っていたのも確かだ。

 

午後から郵便局にいくというので、

 

「もしかしたら僕が買って、そっちに送ったものかも知れんから、僕に送ってくれる?」

 

午後、電話がかかる。
また同じようにマスクが来たとの説明で
『郵便局の人に話したら、受取拒否できると言っていたので、そうする」
とのこと。

まあ、「僕が実家に買った」という可能性も残っていたので、こっちの食って欲しかったけど、郵便局に任せるのもいいかもなと思った。

 

このマスク事件の間の電話でも、何度も何度も同じ要件で電話がかかってきてたので、僕は正直疲れていた。

 

不安になり、電話して、電話したことを忘れてまた不安になる

 

このループだったんだろう。
送りつけ詐欺って、ほんとに腹が立つ。

まあ、今実家には「現金」しかないし、預金は僕が把握してるし、クレジットカードももってない。
さらに「どんな支払いでも言ってね。こっちでなるべく払うようにするから」と言い含めてるので「お金を騙し取られる」可能性はすくないとは思う。

でも、老人を不安にさせる犯罪は、やっぱすかん。

 

 

結局その後ももう一度、おなじような(でも形状が違う)マスクが送られて来た。
その時も「郵便局で受取拒否できるよ」と電話で言った。

 

「あ、そうなんやね。じゃあ安心やね」

 

と言っていた。